ドラゴン殺人事件 ヴァン・ダイン

ドラゴン殺人事件 (創元推理文庫 103-7)ドラゴン殺人事件 (創元推理文庫 103-7)
(1960/10)
ヴァン・ダイン

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<あらすじ>
ニューヨークの外れにあるスタム家の屋敷で事件は起きた。ある青年が衆人環視の中でプールに飛び込むと、そのまま青年は浮かんでこなかった。脱出可能な場所からは足跡が無い。となると、プールで溺死して遺体は沈んだままな状態であるはず。しかし、プールの水を抜いても、彼の遺体は出てこなかった。彼はいったい、どこへ消えたというのか。


ファイロ・ヴァンスシリーズ7作目の作品。作家ヴァン・ダインはミステリー作家が面白い長編小説を書けるのは6作目までだろうと言ったそうですが、今作品は言った本人がそれを実証してしまったと評される作品です。つまり、世間では駄作とされている作品ですが、はたしてどうなのか。
駄作だったり、不人気でも自分は好きだったり気にいったりする作品ってかなりあるので。

さて、あんまり期待しないで読んだんですが、結構面白いじゃないですかドラゴン殺人事件!
プールから消えた青年、水を抜いた後から発見された謎の足跡、竜の仕業だと喧伝する老婆、謎が謎を呼ぶ展開が続いて、グイグイと引っ張ってくれます。
〝ドラゴン”というのがタイトルにあるとおり、竜の仕業であるかのように見えるオカルト展開や胡散臭い雰囲気もベタで良いです。不可能犯罪もあって他の作家で言ったらカーに近い雰囲気。さっき書いたようにまるで「祟りじゃ!」みたいな感じで竜の仕業と叫ぶ婆さん、土地に残るドラゴンの伝承、なんかは横溝みたいです。
今までのヴァンダイン作品とは一風変わった雰囲気だけどヴァンスが竜や魚にまつわる知識を披露したりと、ヴァンダイン作品らしさもちゃんと残してます。


こんなに面白い要素がたくさんあるのに評価が低い理由、その一つはミステリーとして真相がガッカリする人が多かったからかと思われます。
せっかくの不可能犯罪なのに、こんなショボイトリックかよ!と思う人もいるかも。
しかし、ちゃんと伏線も張ってあったし、ある意味意外性のあった真相だったしで個人的には真相も含めて楽しめたんだけどなあ。
少なくとも、警察が無能すぎたり、とあるトリックがアンフェアだったり、犯人当てがいくらなんでも簡単すぎた『グリーン家殺人事件』よりはミステリーとして楽しめました。
ここで書く事じゃないけど、個人的にグリーン家は名作とされる割にはミステリーとしては全然な作品だと思ってる。

ミステリー的な評価が低いから『ドラゴン殺人事件』は駄作とされているのか?世間の評価が低い理由はもう一つあるのじゃないかなと思っております、それは探偵ヴァンスが探偵ヴァンスらしさを発揮していない事。
作中に散りばめられた数々の情報から、ヴァンスは真相を解く事に成功します。別におかしな事はないはず、探偵としてヴァンスは普通の探偵をしていた。だけど、それじゃあ駄目なんだ、普通の探偵じゃあ!
ファイロ・ヴァンスがファイロ・ヴァンスたる所以のファイロ・ヴァンスらしい推理を発揮しないと。
今作品では、ヴァンスは容疑者たちの心理を読み解き、そっからこじ付けとされかねないようなプロファイリング的ないつもの華麗な推理がほとんど見られません。
普通の探偵なら情報だけで真実に辿り着くのは問題無いけど、ヴァンスがそれじゃあ読者は納得いかないって事なのでしょう。
ヴァンダインの作品の人気は、作品のデキだけでなく探偵ファイロ・ヴァンスのキャラクターによるものでもあったのではないかというのが自分の結論です。
まあ、自分にとってはヴァンスのあの推理が別に好きでないから、あんまり問題ないんですけどね。


個人的な感想としては思ったより楽しめた作品でした。そこまでヴァンスらしさに拘らない人ならそれなりに楽しめるんじゃないかと。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

僧正殺人事件 ヴァン・ダイン

僧正殺人事件 (S・S・ヴァン・ダイン全集) (創元推理文庫)僧正殺人事件 (S・S・ヴァン・ダイン全集) (創元推理文庫)
(2010/04/05)
S・S・ヴァン・ダイン

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<あらすじ>
コック・ロビンを殺したのはたあれ。「わたしだわ」と、雀がいった。マザーグースの童謡になぞられた殺人事件が発生する。警察の捜査は犯人の足取りを捕らえることができず、またしてもマザーグースの童謡どおりに殺人が遂行されてしまう。マザーグースの見立て殺人を示唆する手紙を送りつけてくる“僧正”の正体とはいったい誰なのか?この奇妙で冷酷な連続殺人事件に探偵ファイロ・ヴァンスが挑む。


この『僧正殺人事件』はヴァン・ダインの代表作にして、最高傑作との呼び声が高く、かの江戸川乱歩が絶賛し黄金期のベスト10に選んだことでも有名な作品です。
江戸川乱歩が選んだベスト10はそれぞれ文庫にもなっております。

僧正殺人事件 乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10(3) (乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10) (集英社文庫)僧正殺人事件 乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10(3) (乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10) (集英社文庫)
(1999/05/20)
S.S. ヴァン・ダイン、S.S. Van Dine 他

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“見立て殺人”、特に童謡に見立てて殺人を行う“童謡殺人”はミステリーの世界では割かしポピュラーな題材で、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』横溝正史の『悪魔の手毬唄』など有名作品が多いです。そういった“見立て殺人”、“童謡殺人”の元祖がこの『僧正殺人事件』で、作品のクオリティーもさることながら先駆者ということがこの作品が傑作とされている由縁でもあります。

“見立て殺人”、“童謡殺人”なんてもう後世の人間が色々やりつくしたテーマ、今頃古典なんて読んでも…なんていう考えはノン、ノン!
マザーグースに見立てられた奇妙な殺人事件、自分のことを“僧正”と名乗る劇場型犯人、一向に犯人の足取りがつかめず目星がついたと思ったら死体となって容疑の晴れる容疑者たち、スリリングで不気味でまるでサイコスリラーのような面白さがあります。日暮雅通氏の読みやすい訳もあってか読みやすく、続きが気になってどんどんページが進み止まらなくなるほどの面白い作品です。

また探偵のファイロ・ヴァンスも一癖も二癖もありますがなかなか魅力的な探偵です。心理を重視したヴァンスの推理は正直詭弁スレスレなんですが、学問や芸術などの知識を生かした彼独特の表現により説得力が増し、おおそうなのかと納得してしまいそうになる(あくまで「しまいそうになる」ね(笑)後で考えると矛盾があることが多々ある)とともにヴァンスの華麗な推理にほれぼれしてしまいます。
あと毎回毎回衒学趣味をひけらかし嫌味を言うヴァンスと友人であるマーカム地方検事やヒース部長刑事たちのやりとりが楽しいです。他の探偵ものでも刑事や相棒に自分の知識や頭脳をひけらかして嫌味を言う探偵というのは多く見られますが、ヴァンスほど嫌味な奴はいないでしょう(笑)

そんな嫌味で貴族趣味でおそらく美系と思われるいけすかない探偵ヴァンスさん、今作では意外と人間臭い面を見して評価↑です。被害者たちの死を悼んだり少女を助けるために必死になったりと普通の正義感あふれる探偵ぽいです、どうしたヴァンス!君はそんな人間らしい奴ではなかったはずだ(笑)
探偵ヴァンスと同じく犯人を捕まえるためいつもより奮闘するマーカムやヒースたちの活躍も見所。一癖も二癖もある容疑者たちもみんなキャラが立っていて探偵をはじめとした登場人物の魅力も作品を面白くするのに貢献しています。


※ここから続きはネタバレがあります

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