黒死荘の殺人 カーター・ディクスン(ジョン・ディクスン・カー)

黒死荘の殺人 (創元推理文庫)黒死荘の殺人 (創元推理文庫)
(2012/07/27)
カーター・ディクスン

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<あらすじ>
血塗られた歴史を持つ『黒死荘』で交霊会が開かれる。心霊学者ダーワースが行う交霊会の真贋を確かめるためマスターズ警部とケン・ブレークは捜査を始めるが、真贋が確かめられる前にダーワースは惨殺されてしまう。しかも、誰もどうやっても入る事ができない密室で死体は発見されたのだった。


HM(ヘンリ・メリーヴェル)卿のデビュー作にて、カーの作品で傑作と名高い作品です。
題名はハヤカワ版のプレーグコートの方が有名なんでしょうが、今回読んだのは創元社で新訳で書かれた『黒死荘の殺人』です。

ともかくこの作品はカーの中でも特にオカルト色の強い作品です。交霊会といい、いわくつきの短剣を盗んだ謎の後ろ姿といい、短剣と黒死荘にまつわる呪われた伝説といい、これでもかっつうほどオカルトっぽさ満載です。
カーの描写も気合いが入っていて、前半の不気味な雰囲気だけでもカーで屈指の傑作だなと言えるぐらいです。
しかも今回は死体の描写もグロいし、カーが読者をビビらしてやるぜーって気満々で書いていたんだろうなあ。

しかしカーはこれだけ気合い入れて読者の恐怖を煽ったのに、後半HM卿が登場すると空気がガラっと変わってしまいます。
一見、幽霊の仕業としか思えないような状況をHM卿の理性が解き明かし、作品の空気を霊的な世界から現実的な世界へと変えていくという話の構成はミステリーとしてベタではあるんだけどよくできているなあと感心します。
前半がオカルト色が強い分、転換が効果的です。
まあ、探偵が霊的なものを暴く推理の力だけでなく後半空気が変わるのはHM卿のキャラによるところも大きいんだけどw
やっぱHM卿は、おもろいおっさんやわぁ。
余談ですが、HM卿もの三作目『赤後家の殺人』が微妙に感じられたのはHM卿のキャラの面白さが発揮されなかったからでもあるのじゃないかなあと思ったり。

デビュー作でもHM卿はHM卿なんですが、マスターズ警部は後の作品と比べると若干キャラが違いますね。前半、有能であるかのように描かれている彼には違和感を感じてしまいます(笑)いや、無能とは思わないんだけどね。後、この作品では彼は怪奇現象のインチキを暴く事の専門の刑事という設定になってますが、この設定は後の作品ではなくなったようですな。
後の作品と比べてキャラが違うといえば、HM卿ものでちょくちょく出てくるケン・ブレークもキャラが少し違うように感じてしまいますな。『一角獣の殺人』だともう少しフランクでお調子者のような感じを受けたんですが、黒死荘だとほとんど無個性なただの驚き役の狂言回しでしか無いです。この作品では彼のフィアンセが出てきますが、『一角獣の殺人』では別の女性とくっつく事になっていましたし。
やっぱ最初の作品だとキャラも立ちきってないし、設定も固まってなかったんだろうなあ。
デビュー作でほぼキャラが固まっているHM卿は流石というべきか、主役とはそういうものだという事なのか。


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白い僧院の殺人 カーター・ディクスン

白い僧院の殺人 (創元推理文庫 119-3)白い僧院の殺人 (創元推理文庫 119-3)
(1977/10/20)
カーター・ディクスン

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<あらすじ>
イギリスの歴史ある屋敷「白い僧院」の別館でハリウッド女優マーシャ・テートの撲殺死体が発見された。一見、普通の殺人事件かと思われたが、死体が発見された時の状況が普通ではなかった。建物の周りは雪でおおわれ、足跡は発見者の行きの足跡しかなかったのだ。


作者の名前はカーター・ディクスンとなっておりますが、実はジョン・ディクスン・カーの別名です。出版社の違いや権利の関係でカーター・ディクスンという別名義を使わなければならなかったとか。主にカーター・ディクスンという名義はギディオン・フェル博士と双璧をなすカーの探偵ヘンリー・メリーヴェル卿(HM卿)の作品で使われています。個人的にこの『白い僧院の殺人』は初めてカーに触れた作品なので思い入れがあります。最初はカーの文体や作風に慣れるのに苦労したなー(遠い目)。

あらすじからもわかるとおり密室殺人のバリエーション足跡のない殺人を扱った作品。一見不可能に見えるこの雪の密室をどうやって突破するのか?その解決方法を登場人物たちが好き勝手推理し、三者三様の解答が出てくるのが面白いです。しかも、解答のどれもありえそうなもので、その解答から作ったトリックでもちゃんとした作品ができそうなのがいい!考え出したアイディアを惜しむことなく一つの作品に詰め込んでいるのがほんと凄いよなあ。一般ピーポーの解答は全て否定され、最後に探偵が真実を答えるという構成になっており、まさに真相は読者(一般ピーポー)の想像を超えたものであり、それを解き明かせる探偵の凄さも引き立たせる形になっております。

余談ですが、フェル博士とHM卿どっちが好きかっていうとHM卿の方が好きです。正直、フェル博士って影うすいんだよなあ。主に語り役となる人間が主役となって(『魔女の隠れ家』ならランポールが主役)博士自身はサポート役に徹する形が多いためだろうか。まあ、それはそれで作品ごとに主役が違うということでいいんだけど。
この『白い僧院の殺人』にも狂言回しの役となるHM卿の甥であるアメリカの外交官ジェームズ・ベネットがいるんですがしっかりとHM卿に存在感があります。女優マーシャ・テートに毒舌をふるったり、大きい巨体をノシノシいわせたり、迷えるヒロインにアドバイスを送ったりと要所要所で推理以外の活躍もしてます。
これらのことはフェル博士もしてるはずなのに、どうして印象が違うんだろうかと考えたんだが、すぐにわかった、個性の問題だ。
フェル博士って普通すぎるんだよなあ。それに対してHM卿は悪人ぶってるくせに、ついついおせっかいをして助け舟を出してしまう。要するにツンデレですね。ツンデレってのは老若男女変わりなく素晴らしいということさ。
あと相方の問題も。相方であるマスターズ警部もなかなか面白いおっさんです。HM卿との漫才が結構楽しいんです。対してフェル博士の相方は真面目一徹ハドリー警部。まあ彼は彼でいいんだけど、HM卿とマスターズ警部のやりとりに比べるとね。


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死が二人をわかつまで ジョン・ディクスン・カー

死が二人をわかつまで (ハヤカワミステリ文庫)死が二人をわかつまで (ハヤカワミステリ文庫)
(2005/04/21)
ジョン・ディクスン カー

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<あらすじ>
劇作家ディックはレスリーと婚約を結び、幸福な未来に胸を膨らませていた。しかし、村の催されたバザーの占い師を演じていた犯罪学者ハーヴェイ・ギルマン卿から忠告を受けたとき事態は急変する。婚約者レスリーの正体を教えようとすると、レスリーが持っていた銃でハーヴェイ・ギルマン卿が撃たれたのだ。銃の暴発ということで事故として処理され、一命を取り留めたハーヴェイ・ギルマン卿はディックに夜に一人で家に来てほしいと言う。そこで聞かされた話にディックは驚愕する。レスリーの正体は過去に三人の男を殺した毒殺魔だというのだ。


フェル博士もの。劇作家ディック・マーカムがとあるイギリスの田舎町で巻き込まれた事件です。
カーお得意のオカルトはないけど、レスリーは本当に毒殺魔なのか?とディックが疑心暗鬼に陥る中、真実を知ろうとする様子は緊張感がありサスペンス的な面白さがあります。その上、お約束の密室殺人事件が起きて、ディックに好意を持っている女の子シンシア(しかもあきらかにレスリーに対して敵愾心あり)まで首を突っ込んできてとんでもなくややこしい状況になってしまいます。そしてようやくフェル博士が登場して、事態は落ち着くかと思えば、さらにひっくり返されて・・・。

センセーショナルな発端で始まって、そこから展開が二転三転していき、さらに一章ごとの引きが上手いのでどんどん続きが気になります。ミステリーとしてすんごいトリックがあったり驚愕の結末があるわけではないけど、最後までディックとレスリーがどうなってしまうか読めなくて、サスペンスとしてたいへん楽しめた作品でした。

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魔女の隠れ家 ジョン・ディクスン・カー

魔女の隠れ家 (創元推理文庫 118-16)魔女の隠れ家 (創元推理文庫 118-16)
(1979/04)
ディクスン・カー

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<あらすじ>
チャターハム監獄の長官を務めてきたスタバース家には、当主が首の骨を折って死ぬという伝説があった。先代の当主も「魔女の隠れ家」と呼ばれる絞首台の近くで首の骨を折って死んだ。それから二年後、当主の座を相続するため監獄の長官室で相続のための行事が行われる。当主となるマーティンを守るため厳重な警備が敷かれるが、またしても首の骨を折って死んだマーティンの遺体が発見される。この奇怪な事件に辞書編纂家ギディオン・フェル博士が挑む。


ジョン・ディクスン・カーは日本ではあまり有名ではありませんが密室、不可能犯罪の巨匠と称賛され、アガサ・クリスティ、エラリー・クイーンといった超有名推理小説家と並ぶと称されるほどの推理小説家です。彼の作品から日本の多くの推理小説家も多大な影響を受けています。そんな彼の作品の代表的探偵ギディオン・フェル博士のデビュー作がこの『魔女の隠れ家』です。

カーといえばクリスティと比べて癖の強く難易度の高い作品が多いと思われているふしがあります。実際、クリスティと比べて難解な言い回しもあったりして読みにくかったりします。これには作品によって良質でない訳があったり、クリスティほど再版されることがないので訳が古かったりするのも理由かと思われます。個人的にはカーの癖のある文章や古めかしい訳も慣れれば気になりませんし、むしろそれが良いとも思えるんですけどね。


カー初心者にもお薦め
密室の巨匠と呼ばれるカーの作品を読んでみたいよー、でもどれも難しそう~、というそんなあなたにピッタリな商品をお薦めしましょう!それがこの『魔女の隠れ家』。
カー特有のしつこくて過剰な文章の装飾も控えめで初心者に安心!詰め込み過ぎて内容把握に手間取るということもなく、ほどよい情報量!しかもページは約300ページで仕事や学校で時間の無い方にもお薦めです。
それでいて怪奇、オカルト、ロマンス、意外な犯人といったカーのお決まりも押さえております。しかも今回はカーには珍しく暗号付き!まさにお買い得です!今回は、カーの代名詞と言ってもいい密室は残念ながらありませんが、代わりのトリックが用意してありますのでご安心を。どんな内容かは・・・おっとこれは商品をご購入いただいてからのお楽しみ♪
さて、そんな作品の気になるお値段は創元推理文庫ですとなんと定価で560円!(消費税が加算されます)まあ!実に普通の値段♪
フェル博士のデビュー作であり初心者にもカー愛読者にもお薦めの『魔女の隠れ家』、ぜひ手に取ってみてください!


カーの情景描写
カーの良さといえば、情景描写の巧みさにあると個人的に思っています。クリスティと比べて情景描写に紙面を割く量が多いです。(逆にクリスティが簡素すぎると言う人もいるけど)
『魔女の隠れ家』ではそれがいかんなく発揮されています。
アメリカから来た青年ランポールの目を通して描かれる大都会アメリカにはないイギリスの美しく風情のある風景、冒険を予感させる夜を走る汽車、湿原にそびえる不気味な監獄、そして雨のなかのイギリス。カーって雨が降るじめじめした不気味でどこか心地良い雰囲気ってのが抜群に上手いなっていつも思う。ただ大雨に雷ってのが異様に多いなとも思います。


フェル博士
この作品の主人公であり探偵役でもあるギディオン・フェル博士、作品に描かれる彼の姿はとにかく巨体でデブで眼鏡(ひどい言い草)、そんな目立つ見た目なのに、あまり出しゃばらず控え目です。
彼のユーモラスなキャラクターは面白いのですが、フェル博士は探偵として事件を推理し解決はするができるだけ黒子役に徹している気がします。
ワトソン役といってもいい(といっても第一人称で語り役になるわけではない)ランポールの方が主人公っぽいです。
フェル博士ものは探偵はできるだけ事件を解決するためだけの装置であり、物語の視点と主役は別の人間であるというパターンが多い印象があります。
カーの他の探偵たちと比べてよりそう思うのは、フェル博士が温厚な性格だからだろうか。


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