五匹の子豚 アガサ・クリスティ

五匹の子豚 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)五匹の子豚 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
(2003/12)
アガサ クリスティー

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<あらすじ>
「母は無実だったのです。」
若い恋人に走った高名な画家を毒殺した容疑で妻が逮捕された。裁判の結果、有罪となり彼女は刑務所で死んだ。それで事件が終わったかに見えたが、十六年後、二人の遺児カーラが自分は無実であると告白する母の遺書を見つけ出す。母の無実を信じるカーラは、ポアロに事件の再調査を依頼する。十六年前の過去から真実を掘り起こすポアロの調査が始まった。


ポアロシリーズ21作目の作品。
とにかく読んで驚いた!アクロイドやそして誰もいなくなったみたいな衝撃的な結末によって驚くのではなくその完成度に!クリスティの数ある傑作のなかでも玄人好みのする傑作という評判は真であった。人によっちゃアクロイド、オリエント、そして誰もいなくなったを超えてベスト1な作品になるだろうなあ。そういう意味ではクリスティをある程度経験積んでからこの作品を読めたことに感謝。自分がクリスティ初心者のときに読んだら地味な作品と簡単に切り捨ててたかもしれない。
ひと

今作のポアロの調査の方法は過去の資料を読み、事件に関わった人々の証言を一人ずつ丹念に聴いていくというもの。十六年前の事件ですから証拠もほとんどなく資料もあくまで補助的なもので、とにかく証言が頼りです。
この作品は三部構成になっていて一章ごとにポアロが一人の登場人物に会い、過去の話を聴いていくというのが第一部の構成です。最初は弁護士、警察官など事件を調査した側の証言を聴き、次第に事件の当事者へと移っていきます。その五人の関係者をポアロがマザーグース『五匹の子豚』に喩えたことがこの作品のタイトルにもなっています。

子豚たちに証言を聴き終えると決まってポアロは彼らに事件の前後の様子を手記にして書いて自分のもとまで送ってほしいと頼みます。この五つの手記をポアロが一章ごとに一匹の手記を読んでいくというのが第二部です。

そして全ての情報が集めたポアロは関係者達を事件のあった邸に集めます。彼らの前で推理を披露するというのが第三部です。
一部が証言、二部が手記、三部が真相解明という三部構成でこの作品ができてるわけです。

これらの構成からわかるように推理小説として読者が必要な情報を得るためにポアロが機械的に物語を進行させていくような構成で、一見、推理小説として無駄のない非常にゲーム的な小説に見えます。そのため単調で物語として潤いのない無味乾燥な推理小説に見えますが実際は逆です。

機械的な構成にも関わらず非常に文学的な推理小説です。

それぞれの登場人物が見てきた人物、風景は同じであっても見えたものは全く違います。ある人は逮捕された妻カロリンを悪人と言い、ある人は同情的な目で見ます。同じ同情的な目で見てる人でも、人によっては馬鹿な女と言いまたある人は罪を享受した自己犠牲的な淑女と言います。同じく殺された夫のアミアスも色んな解釈が登場事物の口から語られますが妻のカロリンが一番多彩に変化していきます。
また、証言をする人物たちもその証言によってそのキャラクターに命を吹き込まれ、過去をどう見てきたかによって彼らの人となりとそれまでの16年間をどう歩んできたかを語ってくれます。

ポアロが掘り起こしたのは16年前に死んだ二人の魅力的な夫婦とその二人の死をみとった人々の心だった。16年前とその後の人々の悲喜劇はとても物語的です。


※ここから続きはネタバレがあります

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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