真夏の方程式

真夏の方程式 (文春文庫)真夏の方程式 (文春文庫)
(2013/05/10)
東野 圭吾

商品詳細を見る



ドラマガリレオの劇場版第二作にて東野圭吾原作『真夏の方程式』の映画化作品です。自分は原作未読で見てきました。
前作の劇場版『容疑者Xの献身』は名作という評判らしく、自分も劇場で見ましたが良い映画でした。
名作の続編というのは難しいもので『真夏の方程式』はどうなのか。

一言で言えば地味
TV版のガリレオのような派手でユーモアたっぷりの作品じゃないです。『容疑者Xの献身』と同じくしっとり系で人間ドラマ主体の作品です。しかも、『容疑者Xの献身』みたいに大きなトリックがあるわけではないので、より地味な印象を与えてしまいます。
しかし、だからといってつまらないというわけでもないし、劇場でするような作品じゃなかったというわけでもありません。
TV版には無くて同スタイルの作品前作『容疑者Xの献身』ともまた違った魅力を持った良い作品だったように思います。地味だけど。


簡単なあらすじを書くと、湯川学は海底鉱物資源の開発の説明会のため、緑岩荘という旅館で宿泊する。湯川が宿泊した次の日に、同じ旅館の宿泊客の塚原が死体として発見される。湯川は旅館を経営している家族はこの事件の事について何か秘密を隠している事に気づくが…。
ってな感じの内容。

きれいな海に面した海辺の町が舞台という事で、浜辺や海中の映像がすんごく綺麗です。どこがモデルの町なんだろ、行ってみたい。ドラマの舞台である都市とは全然違う舞台ってのがスペシャル感があって、劇場版って感じですな。そこらへんも『容疑者Xの献身』にはなかった良いところかも。
この綺麗な海辺の町には湯川先生と被害者の他にもう一人部外者がやってきます。緑岩荘を経営する川畑夫婦の甥である少年恭平君です。

夏休みに親戚の家に旅行するというのは小学生の定番のイベント、恭平君の体験と他の小学生が体験する事と違うところは湯川先生と出会った事、そして事件に遭遇した事。
事件の事を知った恭平君は怖がる事なく殺人事件に興味津津、まるで探偵ごっこにはしゃぐ子供のよう。恭平君のもう一つの興味は、謎の学者らしき男湯川学。

子供嫌いな湯川先生は最初、恭平君の事を無視します。しかし、恭平君が理科が嫌いである事を知ると、湯川先生は彼に科学の楽しさ、凄さを理解してもらおうと働きかけます。
遠くの海の底を見たい恭平君のため、湯川先生はに携帯電話を中に入れたペットボトルのロケットを海に飛ばします。この行為を湯川先生は〝実験”と呼び恭平君にも半ば強制的に協力させるんですが、この〝実験”パートが凄く見てて楽しいんですよね。科学を理解させるために真剣な湯川先生も海の底を見ておおはしゃぎな恭平君の様子も微笑ましい。見てる人間も子供の時、こういう事やって(さすがにこの映画のような本格的なものではないけど)楽しんでいたなってノスタルジーを感じさせられます。さらに、夏休みという状況つきですから。


さて、事件の方はというと、死んだ塚原が元警察である事が判明し警視庁も動く事に。たまたま緑岩荘に湯川先生が宿泊していた事からドラマ2期からのレギュラー岸谷君が派遣される事になります。
岸谷君は被害者が一酸化炭素中毒で死んだのに屋外で遺体が発見された事などからこの事件がおかしいと言うが、湯川先生は興味が無い様子。岸谷君はドラマの時のように、事件の興味を惹くよう煽るが、効果なし。しかし、何か気になる事があるのか湯川先生も事件の捜査に乗り出します。
岸谷君も東京に戻り、塚原が過去に追っていた事件や川畑家の過去について精力的に聞き込みをします。

にしてもこの映画だけだと岸谷君、普通に有能だなあ(笑) クズかわいいドラマの時の君はどうしちゃったの?いや、ドラマの時も無能ってわけじゃないし役立ってる時も多々あるんだけどアレな行動が多すぎて。
ああ、栗林さんがいないから彼をいじめるシーンが無いおかげでクズな言動があまり無いのか。この映画に何か足りないと思ってら栗林さんか。まあ出てきてシリアスな空気を壊されても困るから彼の出番は必要ないかなw
いや岸谷君だってクズな言動がほとんど無くて映画の空気に馴染んでるんだから、栗林さんも出ても大丈夫…やっぱりシリアスな栗林さんを想像できないw

事件の捜査が進み、湯川先生も事件の真相に気づきつつある中、事件は思わぬ事態に動きます。
いったい、川畑家は何を隠しているのか、事件の真相は?


※ここから続きはネタバレがあります

事件は川畑重治が自首してきた事で急展開する。割れていた壁から暖炉の煙が漏れそれが原因で塚原は一酸化炭素中毒で死亡し、自分の不手際で塚原が死んだ事を隠すため、遺体を妻の節子と二人で外に運んだと重治は告白する。
川畑夫妻は業務上過失致死・死体遺棄で逮捕され、事件は終結するかに思われた。
しかし、納得できない人間がただ一人。湯川学は事件の隠れた真相を解くため動き出す。

というわけで、真相に川畑家の隠された秘密が出てくるわけですが、そこで明かされる真実は確かになかなか衝撃的であり家族の絆に感動できなくもないです。
が、娘の成実は脅されたといえ簡単に人を殺すし、節子も不貞な妻だし(もしかしたら子供がお腹にいる状態で重治と結婚したのかもしれないが)、そして極めつけは重治が家族の秘密を守るためとはいえ他人を利用して罪もない人間を殺すといった具合で家族の行動に問題あり。この家族3人の行動に引っかかるところがあるせいで素直に感動できないのは残念。
成美の本当の父親仙波が娘を庇うため、殺人の罪を被り秘密を死ぬまで守ろうとするのは素直に感動できるんだけどねえ。
後、ミステリーとしても途中で真相がだいたい読めてしまうのもマイナスポイント。
少し引っかかる感動ストーリーにミステリーとしてもベタすぎるという事でここだけ抜き出すと、イマイチな映画だったなあで終わってしまうんですが、問題は重治が殺人を遂行するために利用した人間です。

なんと重治は恭平君に殺人の片棒を担がせたのだ!
塚原を一酸化中毒で死なせるには煙突を防ぐ必要がある。しかし重治は足が悪いので恭平君に水で濡らしたダンボールで煙突で防がせたのだ。もちろんその結果、何が起こるか理解してやった事ではない。
この真相を知った時はそりゃもう衝撃を受けましたとも。今まで張ってあった伏線や、湯川先生の言う「一人の人間の人生が歪んでしまうかもしれない」という言葉の意味など、ああそういう事だったのねと大いに理解できました。この真相に衝撃を受けるとともに、胸糞が悪くなりましたわ。子供にこんな事させるなんてなあ。それだから、いくらごめんなって言ってくれって言っても重治に共感できないわけでして。

重治は湯川の言う真相を認めないため、結局、事件は業務上過失致死・死体遺棄で終結してしまう。なんとも苦い終わり方。
恭平君も自分のやった事に察するところがあり不安になる。
成美も自首してしまいそうな様子で誰も救われないまま終わるのかと思ったら、湯川先生は成美にある事を頼みます。恭平君を守って欲しい、彼が真実を知りたくなったらその真実を包み隠さず話してほしいと。それは全てを知った上で自分の進むべき道を決めるため…。

玻璃ヶ浦から帰ろうとして駅で電車を待つ恭平君、そこで彼は湯川先生と再会します。
湯川先生はペットボトルのロケットと実験データーを恭平君に渡し「楽しかったな」と一言。
恭平君は自分の不安を口にするが、湯川先生は言います「問題には必ず答えがある。だけど、それをすぐに導き出せるとは限らない。その答えを見つけるまで、僕も一緒に考える。一緒に悩み続けるよ(意訳)」。
そして二人は分かれる事に。恭平君の手には思い出のペットボトルのロケットがありました。


ぶっちゃけ言うと川畑家の隠されたドラマだけだと、ミステリーとしても人間ドラマとしてもそこまでのものではありません。
湯川先生と少年恭平君の交流がこの映画の一番のポイントであり、少年が体験したひと夏の苦すぎる思い出というのもこの映画のストーリーの一つなのではないでしょうか。
湯川先生と恭平君との実験も楽しげなシーンというだけでなく、後に効いてくるシーンだったなと最後まで見て感心しました。

恭平君の話の方が印象に残りましたが、だからといって川畑家の話は無くて良かったという事もありません。川畑家の話があるから恭平君の話も引き立つわけでして。
秘密を隠し続けた川畑家と大きな秘密を抱える事になった恭平君という対比にしているのではと思われます。
湯川先生が説明会の時に成美に言った「あとは選択の問題です」という言葉の意味が重たい。川畑家は隠し続ける事を選択した、恭平君はどう選択するのか。それは物語の中では語られていませんが、彼が選択する道は険しくても川畑家のような不幸な道ではない事を予感させてくれる爽やかな幕引きだったと思います。

スポンサーサイト

テーマ : 映画
ジャンル : 映画

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

劣化

Author:劣化
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR