草原の風(中) 宮城谷昌光


草原の風(中) (中公文庫)草原の風(中) (中公文庫)
(2013/10/23)
宮城谷 昌光

商品詳細を見る


<あらすじ>
赤眉の乱が勃発、新帝国が崩壊していく。劉秀は緑林軍に参加し、新への反攻を始める。新軍を次々と倒し勢力を拡大する緑林軍、しかし緑林軍の前に100万と号する新の大軍が立ちはだかった。


後漢の創始者光武帝となる劉秀を描いた『草原の風』の中巻。
劉エンと劉秀の兄弟が緑林軍に参加し、時代と物語は大きく動き出します。兄弟の活躍や戦のシーンに紙面が割かれ、エンターテイメントとしてこの『草原の風』という作品の中で一番面白い巻かもしれません。

劉秀の名将ぶりがいかんなく発揮した事でも有名な“昆陽の戦い”が書かれているのがこの巻でもあります。
少数の兵で大軍を破る劉秀の大活躍ぶりが爽快です。楽毅といい士会といい、名将の活躍を書くのがやっぱ上手いな宮城谷さんは。

さて、昆陽の戦いの前に話はさかのぼりますが、緑林軍は劉玄を皇帝に立て、劉玄は更始帝となり、自分達は漢を継ぐものだと自称します。
昆陽の戦いの後、劉エンと劉秀達兄弟の名声が高まり、彼らが更始帝の輿望を越える事を恐れた、更始帝の側近によって、劉エンは暗殺されてしまいます。

ちょっとDQN気質だけど、男気と武勇があり、弟の劉秀を侮ったりしつつも時にはこの弟を認め、諭す劉エン兄上が個人的に好きでした。
なので、特にドラマティックにする事も無くあっさり劉エン兄上を死なせた事に個人的に不満があります。たまにあるよな、淡々と重要人物を殺す事が宮城谷作品には。
劉秀も兄の死を確かに悲しんではいるんだが、どうもその悲しみが自分にはあまり伝わってこない。それもそのはず、劉秀は兄の事をそんなに大事な存在だと思っている描写があまり無かったし、そもそも兄の事をどう思っていたかが自分はよくわからなかった。
この劉エンの死をもっと劇的に書き、劉秀の成長に繋げる事ができれば、この『草原の風』はもう一つランク上の作品にいけただろにと思うと、残念です。

さて、兄が粛清され、弟の劉秀にも危機が訪れます。しかし、劉秀はなんと兄の仇となった更始帝に服従する事で難を逃れます。耐え忍ぶ事こそ、まさに英雄の資質であり、これぞ宮城谷主人公ですな。

劉エンの死後、新は崩壊していき、王莽は漢によって討たれます。
これで新帝国は滅亡、更始帝による新しい漢によって世は平和になった…かという事はもちろん無く、戦乱と物語は続きます。

更始帝から北方の平定を命じられ、劉秀は北を向かう事に。
大樹将軍として有名な馮異といった新顔や懐かしの鄧禹といった人材を新たに部下にし、勢力を拡大化していく劉秀。
しかし、王郎という占師が自分は成帝の子の劉子輿と名乗り、冀州・幽州をまたたく間に制圧、劉秀は負われる身となってしまう。

この時の餓えや寒さを凌いでの放浪がまるで『重耳』を想起させます。
宮城谷作品のお約束とはいえ、これまでの宮城谷作品の主役となった偉人達の故事の引用が多く、また劉秀の放浪といい重ねる部分も多いので、この作品はこれまでの宮城谷作品の集大成のように思え、実際宮城谷さんもそういうつもりで『草原の風』を書いたのではないでしょうか。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

劣化

Author:劣化
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR