緋色の研究 コナン・ドイル

緋色の研究 (新潮文庫)緋色の研究 (新潮文庫)
(1953/05)
コナン ドイル

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緋色の研究 【新版】 (創元推理文庫)緋色の研究 【新版】 (創元推理文庫)
(2006/04/28)
コナン・ドイル

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<あらすじ>
医学博士ジョン・H・ワトスンはイギリス軍の軍医としてアフガニスタンに赴くが、そこで負傷し本国を帰還することになった。ロンドンで下宿を探すこととなったワトソンは、知人からシャーロック・ホームズという人物を紹介され、彼とベーカー街221Bで共同生活を開始することに。ワトソンはホームズが初対面にもかかわらず彼の経歴を言い当てたことに驚き、ホームズがたぐい稀な観察力と推理力を持っていることを知る。
やがて、ホームズの元にスコットランド・ヤードのグレグスン刑事から殺人事件が発生したとの手紙が届いた。ホームズとワトスンは現場に向かい事件の調査に乗り出す。


漫画家といえば手塚治虫、ゲームといえばマリオ、RPGといえばドラクエかFF、ロボットアニメといえばガンダム、みたいな感じであるジャンルの中で代表的なものを聞いてみたら多くの人が思い浮かぶであろうものがあります。そして、探偵といえばポアロ、クイーン、明智小五郎、金田一、コナンwと意見が多数出るでしょうが、多くの人がシャーロック・ホームズと答えるでしょう。世界中で最も有名な探偵であろうホームズのデビュー作がこの『緋色の研究』です。
日本人の多くは、小学生のとき江戸川乱歩やルパンといっしょに学校や町の図書館で読み始めるパターンが多いみたいです。自分は子供のころは小説を読むという習慣がなかったので(もっぱら漫画やアニメばかり見てました)大人になってから読み始めました。ポアロからホームズにも手を出してみようと思ったしだいです。
読んだことのない人でも最近だと映画にもなっていますし、犬のホームズがありますし、コナン君がよくホームズの名を出すので(ホームズをテーマにした映画『ベイカー街の亡霊』もあります)ホームズの名前を知らない人は少ないでしょう。国産、海外問わず推理小説にホームズの名前が出てくる頻度は高く、彼の知名度の高さとその影響は驚くべきものです。ですが、名探偵コナンやホームズ以後の推理小説で彼を知った人が今日のミステリーのノリでホームズを読んでみたら面食らうのではないでしょうか?(特に『緋色の研究』は)

なんとこの『緋色の研究』、読者が推理する余地がほとんどありません。読者が知りえない手掛かりをもとにホームズがペラペラと「この足跡を見たまえワトソン、この大きさから犯人は~インチぐらいの大男に違いない」みたいな感じで推理してワトソンに自慢するのを聞かされるだけです。つまり、現代のミステリーでいう事件を推理するための情報を全て読者に提示しなくてはならないというルールが守られていません。というよりルールがなかったといった方が正解でしょう。なんせ、フェアプレイの概念がない時代のミステリーですから。(シリーズが進めにつれて、これらの欠点は改善され、提示される情報が増えていきます。それでも読者が知りえない情報が多いですが)推理小説というより、ミステリー風の冒険活劇小説として読んだほうがいいかもしれません。

正直、最初に読んだときはポアロのようなミステリーを期待していたのでがっかりしました。それでもがまんして読むにつれて次第に面白く感じるようになったのは、19世紀ロンドンの霧の町の雰囲気とホームズとワトソンのキャラクターに助けられたところが大きいです。
ホームズは風俗小説として優れていると言われてるとおり、当時の雰囲気がよく描かれています。雑多な街並み、薄暗い街灯の明かり、タクシー代わりの馬車、世間を煽る新聞、そこに住む人々、ドイルの描写力はなかなかでその世界観に浸れることができます。当時のロンドンを詳しく知らない自分にとってそれはとても新鮮でした。
そして、後者のキャラクター。ホームズの講釈は偉そうで鼻持ちならないとこもありますが、「あなた~をしていましたね」っていう相手の体の特徴を見ただけですぐわかるホームズ独特の推理、あれかっこいいですよね。自分でもやってみたいと思えるぐらい素敵です。あと彼の相棒であり記述者であるワトソン。ホームズの脅威の推理力の驚くワトソンもかわいいですが、ワトソン役と言われるぐらい探偵の助手の代名詞になったわりに結構優秀です。驚き役である彼ですが、後の推理小説のワトソン役たちと比べてあくが強くなく頭もそこそこ良いので彼に腹を立てたり呆れることもありません(ポアロの相棒のアホなヘイスティングズも好きですけどw)また、彼の記述は割かし感情的でなくて客観的であるため安心して読むことができます。それでいて盛り上げるところは盛り上げてくれるし、彼の存在感もちゃんとあります。(感情的すぎると思うのはヘイスティングズw存在感ねえなと思うのはヴァン・ダイン)そんなワトソンは凄く平均的なワトソン役だと思うんですよね、最初のワトソン役なんだから当たり前といえば当たり前ですが。

実はこれらのこと以上にこの『緋色の研究』で惹かれたものが自分にはあります。なんと、この作品犯人が半分ぐらいで捕まってしまいます。そこで一部が終わってなんと第二部の始まり!
急にロンドンからアメリカの砂漠に舞台が変わるんでたまげた!えっえっ何事なの?ホームズは?ロンドンは?というか犯人はどうなったの?
この謎にみちた物語はホームズや事件とどういった関係があるのか?こっから続きはぜひ読んでみてください。

※ここから続きはネタバレがあります
第二部は実は、一部の過去の話であり、何故事件が起こったのかという歴史を掘り明かすための物語です。二部の登場人物の中に一部で殺された被害者イーノック・ドレッバーとジョゼフ・スタンガスンの名前が出てくるあたりで多くの人は気づくでしょう。そうなると、誰がこの二人を殺害する犯人になるのか?それを考えるのがなかなか面白い。本来なら何故この事件が起こったのかを解き明かすのは探偵の役目であり、この作品の構成は推理小説として現代の観点から見ると未熟であると批判を免れない無いかもしれませんが、逆に自分はそれが新鮮に感じ面白いと思いました。
なんせ、この二部が読み物として大変面白い。この第二部は歴史小説家でもあるドイルの力量を感じさせる出来栄えで、モルモン教徒の町ソルトレイクシティを舞台とした二部の主人公とも言ってよいジョン・フェリアとその養女ルーシーの物語は歴史小説じみた面白さがあります。ただしドイルのアメリカやモルモン教徒の知識は眉唾物で偏見に満ちたものですが。

二人の物語にジェファスン・ホープという青年が登場します。ルーシーとホープは惹かれあい、結婚を約束する仲にまでなります。ところがモルモン教の教えによりルーシーはイーノック・ドレッバーとジョゼフ・スタンガスンのどちらかと結婚するよう命令を受けます。娘のことを思いジョンは、ホープとともにこの町を脱走しました。しかし、ジョンは殺害され連れ戻されたルーシーは意に沿わぬ結婚に悲しみ、病死。それを知ったホープはイーノック・ドレッバーとジョゼフ・スタンガスンへ復讐することを決意します。イーノック・ドレッバーとジョゼフ・スタンガスンはホープから逃れるため町を出て、渡英します。その結果ホープによる二つの殺人事件が行われたのです。

取り押さえられたホープはおとなしくスコットランド・ヤードに連行され、以上のようないきさつをホームズ、ワトスン、刑事たちに語りました。そして、彼は言います、自分の所業が正義であるかどうかを神にゆだねると。長い追跡のため無理を続けて体を壊していたホープは、起訴を待たずして獄死しました。

事の顛末の後、ホームズはつらつらとワトソンにどのように事件を解いていったかを説明します。そこで、ホームズの力量に感嘆したワトソンは彼の功績と能力を世に知らせるため記録を書き記すことを決心し、この物語を締めくくります。

ホームズの探偵譚以上に、フェリア親子の人生とホープの復讐劇が強く印象に残りました。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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