香乱記(三) 宮城谷昌光

香乱記〈3〉 (新潮文庫)香乱記〈3〉 (新潮文庫)
(2006/04)
宮城谷 昌光

商品詳細を見る



<あらすじ>
田横は魏の陰謀により囚われの身となってしまう。それは、斉王田儋から救援の軍を引き出すための窮余の策であった。章邯によって壊滅寸前に陥った魏と弟を救うため、田儋と田栄は軍を率いて魏に向かった。
一方、南方では、新たな王を立てて楚を再建した項梁のもとに各勢力が帰趨し始めていた。
今、まさに秦軍と反乱軍の大会戦が始まろうとしていた。


風前の灯火となった魏を救うため、田儋は章邯に戦いを挑みます。しかし、そこは秦最後の名将章邯。夜襲を仕掛け斉軍を敗走させます。長兄(正確には田栄と田横の従兄)として王として兄弟と斉を引っ張ってきた田儋はここであえなく命を落とすことに。弟と斉の人々にとって痛すぎる死でした。兄を助けるため魏を見捨てることになってでも兄のもとへ向かおうとする田栄には、人の上に立つものとしてはどうかと思うが、人間臭さを感じるなあ。田栄次兄はこういう人だったのねってやっとわかった気がする。
魏は章邯によって滅亡。王の魏咎は魏の民を救うため、自分の死をもって章邯に民を迫害しないよう約束を取りつけます。章邯はそれを了承し、魏咎は薪の山にすわり火をつけ、炎の中で生涯を閉じました。
弟と魏を救うため死んだ田儋、民を救うため死んだ魏咎、彼らの死は裏切りと戦乱の世だからこそいっそう清廉に感じられます。

田栄は敗残した兵を集め、斉に帰還しますが、秦軍に追撃を受け、東阿という城で包囲される。さらに田仮、田角、田間が反乱を起こし、斉の首都臨淄が奪わる。王が死んでからというもの斉は不幸が立て続けて起きる泣きっ面に蜂状態。まさに斉は危機存亡の時です。

長坂で曹操に敗れた劉備のごとく、田横も窮余の策を他国に求めます。くしくも孫権と同じ南方の勢力、白羽の矢が当たったのは楚の項梁でした。展成の推挙により田横は、高陵君を楚におくります。その人選が大当たり。
項梁は楚軍を率いて斉を救うことになりました。藺林のような奇抜なアイディアは持っていないけど、展成は地味に役立つなあ。

楚軍には劉邦、項羽たちも部将として参加しているという豪華なメンツです。項梁率いる楚軍と章邯率いる秦軍が激突、まさに名将同士の対決です。勝敗を分けたのは、項梁は劉邦、項羽、田横たち味方をただの駒とは考えず独立して動くことを許したことであるという宮城谷さんの考察はなかなか面白いと思いました。絶対法律順守で司令官の命令を聞くだけの秦軍と楚軍は対称的です。田横のアシストもあり楚軍は秦軍に快勝。消滅しかけた反乱の火がこの勝利で吹き返しました。

秦軍を追いだした斉は、田儋の息子田市を新王とし、今度は反乱を起こした田仮たちの掃討作戦を開始。田横たちの活躍もあり臨淄を奪回し、反乱を全て鎮圧します。が、田仮、田角、田間を取り逃がしてしまいます。このことが斉の外交に暗い影を落とすことに。
楚から援軍の要請が来ますが、宰相の田栄はそれを断わります。それは、田仮を楚でかくまっているから。田仮の首を差し出すなら軍を出すと言うが、楚はその要請を却下します。対して田横は斉が孤立するのは良くないと意見しますが、田栄は「悪人をかばう偽善の国とは付き合いたくない」と言います。兄の頑固さに困惑しつつも、田横は正義感が強く自分の理想を貫こうとする兄に感動します。思えば、田横は正義のため、義のため戦いたいとは言っていましたが、兄たちのように明確な理想を掲げることは無かった気がします。そう考えると田横が進むべき道を作ったのは二人の兄かもしれません。
田横は兄に感心しつつも、斉のため外交を続けるよう説き、再び高陵君を楚におくります。例え援軍はおくらなくても、楚とは付き合い続けたいということでしょうか。

先ほどの勝利の後も楚軍は連戦連勝。が、そのままで終わる章邯じゃない。章邯は項梁に奇襲を仕掛けます。勝ち続けたことで油断したのか項梁はすきを突かれて、敗死してしまう。またしてもピンチに陥った反乱軍。そこで楚は項梁の後を宋義という男にたくします。この宋義、どんちゃんさわぎで油断していた項梁の敗北を予言していたほどの男です。
宋義は楚軍を率いて北上しますが、趙を攻めている秦軍とは戦わず、軍を停止させます。何カ月も軍を動かさず、そのせいで趙は虫の息に、兵士も疲弊してしまいます。戦う様子を見せない宋義に怒りを覚えた項梁の甥項羽は、宋義を殺し無理やり楚軍の司令官になります。
この宋義の顛末のおかげで、彼は無能であるという烙印を押されていますが、宮城谷さんは宋義にもちゃんと考えがあったんだよって擁護しています。
宋義が軍を動かさずに待機していたのは斉との同盟の交渉が成るのを待っていたため。そして趙と戦わせ疲弊した秦軍を叩くというのが宋義の戦略でした。まあ、うまくいく保証はないけど。
それと、楚王は自分が任命した宋義を殺した項羽を許し、楚軍の司令官になることを認めたことで王の権威は失われ、後に項羽に殺されることにつながったと宮城谷さんはおっしゃっています。王の絶対性を強調しなければ、お飾りの王であることを自ら認めてしまったってことですな。
この事件のせいで、斉と楚は疎遠になっていきます。

楚軍を率いた項羽は、神技のような武技と戦術で秦軍を撃破。この勝利で完全に反乱軍側へと流れが傾きます。
誅殺を恐れた章邯は楚に投降。項羽と劉邦の二軍が秦の首都咸陽にせまります。

一方、秦では宰相李斯が趙高の陰謀で死刑に処せられ、秦はますます疲弊してきました。後宮に入って皇帝胡亥の暗殺をたくらんでいた蘭さまでしたが、なかなかチャンスの機会がきません。ついにチャンスが回ってきたと思ったら、他のものに先を越されてしまい、父の仇を討つことはなりませんでした。宮城谷さん的にはヒロインである蘭さまを幸せにするために、血で彼女を汚すことをしたくなかったんだろうなあ。

そして趙高も殺され、新たに秦王(皇帝を辞めて王に降格する)となった嬰は劉邦に降伏します。ついに秦帝国が滅亡しました。やったーこれでハッピーエンドだ!平和な世の中になるぞと思ったら…、もうちょっとだけ戦乱は続くんじゃ。
スポンサーサイト

テーマ : 歴史小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

劣化

Author:劣化
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR