白い僧院の殺人 カーター・ディクスン

白い僧院の殺人 (創元推理文庫 119-3)白い僧院の殺人 (創元推理文庫 119-3)
(1977/10/20)
カーター・ディクスン

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<あらすじ>
イギリスの歴史ある屋敷「白い僧院」の別館でハリウッド女優マーシャ・テートの撲殺死体が発見された。一見、普通の殺人事件かと思われたが、死体が発見された時の状況が普通ではなかった。建物の周りは雪でおおわれ、足跡は発見者の行きの足跡しかなかったのだ。


作者の名前はカーター・ディクスンとなっておりますが、実はジョン・ディクスン・カーの別名です。出版社の違いや権利の関係でカーター・ディクスンという別名義を使わなければならなかったとか。主にカーター・ディクスンという名義はギディオン・フェル博士と双璧をなすカーの探偵ヘンリー・メリーヴェル卿(HM卿)の作品で使われています。個人的にこの『白い僧院の殺人』は初めてカーに触れた作品なので思い入れがあります。最初はカーの文体や作風に慣れるのに苦労したなー(遠い目)。

あらすじからもわかるとおり密室殺人のバリエーション足跡のない殺人を扱った作品。一見不可能に見えるこの雪の密室をどうやって突破するのか?その解決方法を登場人物たちが好き勝手推理し、三者三様の解答が出てくるのが面白いです。しかも、解答のどれもありえそうなもので、その解答から作ったトリックでもちゃんとした作品ができそうなのがいい!考え出したアイディアを惜しむことなく一つの作品に詰め込んでいるのがほんと凄いよなあ。一般ピーポーの解答は全て否定され、最後に探偵が真実を答えるという構成になっており、まさに真相は読者(一般ピーポー)の想像を超えたものであり、それを解き明かせる探偵の凄さも引き立たせる形になっております。

余談ですが、フェル博士とHM卿どっちが好きかっていうとHM卿の方が好きです。正直、フェル博士って影うすいんだよなあ。主に語り役となる人間が主役となって(『魔女の隠れ家』ならランポールが主役)博士自身はサポート役に徹する形が多いためだろうか。まあ、それはそれで作品ごとに主役が違うということでいいんだけど。
この『白い僧院の殺人』にも狂言回しの役となるHM卿の甥であるアメリカの外交官ジェームズ・ベネットがいるんですがしっかりとHM卿に存在感があります。女優マーシャ・テートに毒舌をふるったり、大きい巨体をノシノシいわせたり、迷えるヒロインにアドバイスを送ったりと要所要所で推理以外の活躍もしてます。
これらのことはフェル博士もしてるはずなのに、どうして印象が違うんだろうかと考えたんだが、すぐにわかった、個性の問題だ。
フェル博士って普通すぎるんだよなあ。それに対してHM卿は悪人ぶってるくせに、ついついおせっかいをして助け舟を出してしまう。要するにツンデレですね。ツンデレってのは老若男女変わりなく素晴らしいということさ。
あと相方の問題も。相方であるマスターズ警部もなかなか面白いおっさんです。HM卿との漫才が結構楽しいんです。対してフェル博士の相方は真面目一徹ハドリー警部。まあ彼は彼でいいんだけど、HM卿とマスターズ警部のやりとりに比べるとね。


※ここから続きはネタバレがあります

雪の地面に足跡をつけずにどうやって本館から別館に行くことができたか。その真相は盲点をつくもの。
なんとマーシャが殺害されたのは別の場所であり、死体の第一発見者が死体を別館に担ぎ込んだのだ。別館で第一発見者は別の人間が来るのを待ち、ジェームズが来ると自分の行きの足跡しかないことを確認させ、不可能な犯罪であるかのように見せかけたのだ。

では、犯人は第一発見者なのかというと、答えはノー。犯人は別の人間であり、第一発見者が自分に容疑がかかるのを恐れてこんな手の込んだ密室を作ったのである。つまり密室は犯人が意図して作ったものではなく、犯人にとって偶然できたものに等しかったのだ。HM卿が言うとおり本当にラッキーな犯人だ。
密室を作った人間と殺害者が違うことで犯人当てが難しくなっている部分もあり、自分も最初卑怯だろと思っていたけど、その後色々読むうちにまあありだなと思える境地に至りました。不可能犯罪に偶然はつきものだもんね、こんなことばっか気にしてちゃミステリーは読めないよ(遠い目)。


ミステリーに関係ない部分ですが、カーは自分の作品にロマンスを盛り込むことが多いです。
この作品もロマンスを扱っていますが、割と地味で控え目。でもこの控え目さが真面目なジェームズと幸薄いヒロインキャサリンとのカップルに合ってると思うんですよ。
この真面目で控え目なカップルは、女の身勝手さによって破滅してしまった被害者マーシャと犯人とのカップルとの対比になっているんじゃないかなと思わなくもないです。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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