秘密機関 アガサ・クリスティ

秘密機関 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)秘密機関 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
(2003/11/11)
アガサ・クリスティー

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<あらすじ>
第一次世界大戦後のロンドンで偶然、再会した幼じみのトミーとタペンス。終戦で無職になっていた二人は、お金儲けのため『青年冒険家商会』という名の何でも屋を始める。さっそく仕事の依頼が舞い降りるが、その依頼をきっかけに二人は英国の極秘条約文書をめぐる事件に巻き込まれることに。トミーとタペンスの波乱万丈な大冒険が始まった。


クリスティが長年連れ添うことになる探偵コンビ、トミー&タペンスのデビュー作です。実はクリスティのデビュー作『スタイルズ荘の怪事件』に次いで発表された長編で、クリスティ2番目の作品ということになります(ちょっと意外)。
それでいてクリスティ初の冒険小説、スパイスリラーといったジャンルに分類される作品で、『秘密機関』以降ポアロものなどの本格ミステリーとともにこういったジャンルの作品が書き続けられることになります。特にクリスティの作家人生の前半は本格ミステリーとだいたい半々ぐらいの割合で冒険小説が発表され、そのどれもが傑作ぞろいです。初期のポアロものも『ゴルフ場殺人事件』『ビッグ4』『青列車の秘密』など冒険要素の強い作品が多い気がする。クリスティの作家人生も中盤にさしかかるころには本格ミステリーに専念するようになり、冒険小説の方は次第に数が少なくなっていきます。あー、おしいなあ、クリスティの冒険ものが好きな自分としてはもっと書いてほしかったなー。
というわけでクリスティと言ったら本格ミステリーと言う人もいるけど冒険小説も本格ミステリーに負けないぐらい面白くて自分は好きです。偏愛度は冒険物の方が高いかもしれない。
そんなおいらが偏愛するクリスティの冒険物の基本が全て詰まったのがこの『秘密機関』であります。


可愛くてお転婆な女の子、謎の組織、ロマンス、クリスティお得意のあっと驚く展開、そしてご愛敬の多少のご都合主義、だいたいこれらのポイントでクリスティの冒険物はできています(えー

クリスティの冒険物って頼りない男と行動派な女の子コンビが主人公ってパターン多いよなあ。それでいて幼じみってことも多い。
ヒロインの名前はタペンス(プルーデンス)・カウリイ。神父(牧師だったっけ?)の娘のくせに金にがめつく行動的で頼りない幼じみをぐいぐい引っ張る行動的なヒロインです。それでいてトミーに対して恋する乙女になることもあります(なんという典型的幼じみキャラ)ベタな設定だけどタペンスかわいいよタペンス。タペンスだけでなくクリスティの冒険物はヒロインみんな可愛いんですよ。そしてだいたい向こう見ずなお転婆娘という共通点があるwクリスティの冒険物はヒロインに萌えるために読んでいるんだと言っても過言じゃないね!
対して男の方の主人公の名前はトミー(トーマス)・ベレズフォード。最初は頼りない男と思っていたんですが、タペンスのピンチには奮起しラストにはまさかまさかの活躍をしてくれます。トミーはこう見えても他の探偵たちに負けないぐらい結構優秀です。頼り無いのは最初の『秘密機関』だけで次のシリーズからは普通に優秀な探偵になってます(たまにドジふむけど)。このコンビのキャラクターがこのシリーズの魅力の一つだと思います。


この二人のコンビが探すことになったのが英国の極秘条約文書。第一次大戦時に行われた、あるいは行う予定であった英国の秘密外交や秘密作戦について書かれた文書で、その極秘文書が表に出れば、英国の内外からの信用が失われ国家に大打撃を与えかねない代物です。こういう極秘文書ってホームズでもあったよなあ。クリスティはこういうホームズのオマージュが結構多いですな。
この超重要機密の捜索を英国諜報部が何故だが『青年冒険家商会』に依頼します。理由は素人の発想が必要なんじゃないかという手詰まり状態に陥ったお役所の思いつき。おいおい国家機密を素人に教えんなよと思ったんですが、これぐらいのご都合主義はクリスティの冒険物のお約束なのであきらめましょう。
よく言われることなんだけどクリスティの冒険物はリアリティに欠けていることが多いです、半分ファンタジーと思って目をつぶって下さい。面白ければそれでいいのさ。

さてさて、この極秘条約文書を狙っているのは英国だけじゃありません。国家転覆をたくらむ謎の組織もこの極秘条約文書を狙って、トミー&タペンスと戦うことになります。変な被り物かぶってコードネームで呼んでたりとか、特撮物の怪人組織みたいだ。この謎の組織のボス『ブラウン氏』の正体がこの作品のキーワードで、いわばミステリーでいう犯人です。『ブラウン氏』の正体と極秘文書のありかがこの作品の一番重要な謎です。他にタペンスをめぐってトミーとの恋のライバルになりそうなアメリカ人や、超大物弁護士が仲間となったり、密室殺人事件が起きたり、極秘文書の手掛かりを知る謎の女性が登場したりと物語を盛り上げてくれます。

あと、クリスティの本格ミステリーではあまり見られないアクションシーンがあったりします。敵のアジトに潜入したり、カーチェイスをしたりとトミーとタペンスが八面六臂の活躍をしてくれます。さすがちょっと前までは軍属だっただけあるぜ!ここらのアクションシーン、映画になったら映えそうだな(映画化されてるみたいです)。

大冒険の末、ラストの怒涛の展開、驚きの真相、そして大団円。二人のその後がすんごく見たくなる幕引きです。トミーとタペンスのドタバタカップルは続編『おしどり探偵』でも変わらぬ活躍を見せてくれます。


本格ミステリーほど難しいトリックが使われていたり、超意外な犯人だったりするわけじゃありませんが、ミステリーと冒険物が上手く融合した面白いエンターテイメント作品です。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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