ねじれた家 アガサ・クリスティ

ねじれた家 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)ねじれた家 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
(2004/06/14)
アガサ・クリスティー

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<あらすじ>
外交官のチャールズ・ヘイワードは恋人ソフィアに結婚を申し込んだが、ソフィアはある事件が解決してからでないと結婚できないと言う。その事件とは、ソフィアの祖父アリスタイド・レオニデスが毒殺された事件であった。アリスタイドは莫大な財産を所有していたため、遺産のため殺害を行ったのではないかとレオニデス家の一員に疑いがかかる。チャールズは恋人のため、レオニデス一族が住む『ねじれた家』に捜査に乗り込む。


ポアロやマープル、トミーとタペンスといったシリーズものの探偵が出てこない、俗に言うノンシリーズ作品です。
今回の主人公は外交官であるチャールズ・ヘイワード。父が警視庁副総監である縁もあってかあらすじのとおり、恋人ソフィアのため事件の捜査に出向きます。
父親がお偉いさんで自分も外交官、ボンボンのエリートですか。しかも美人の婚約者つき。なんという絵に描いたような勝ち組なんでしょう!しかしクリスティの描写力にかかれば全然嫌味を感じさせません。むしろ若干へたれ臭が。クリスティの書くエリートってだいたい屑かへたれな気がしますw

レオニデス一族が住む『ねじれた家』、いろんな物を接ぎだしていったら見物人の目が飛び出すほどの変てこな屋敷ができたとか。お、こりゃ屋敷の仕掛けによるトリックがあるに違いない。なーんて事はありません島田荘司とか綾辻行人じゃないんですから。
そこはクリスティ、やっぱり心理面で勝負をしてきます。『ねじれた家』というのはそこに住む一癖も二癖もあるような登場人物や複雑な人間関係に掛けているのでしょう。
だいたいこういう一族ものだと、憎しみあってるとかとにかく仲が悪いとかいうのが典型的なんですが、『ねじれた家』だと、多少の仲の悪さもありますがそれ以上に複雑でみんな死んだアリスタイドに物質的なもの以上に心から依存していました。
第一犯人候補とされるアリスタイドの若き後妻ブレンダも、典型的な遺産がらみの女と少し違っています。家族の一員も彼女が犯人ではないかと疑いつつも違う気がすると思っています。
そういった複雑な関係を持った家族の中に殺人犯人が潜んでいる。しかも、どの人間も殺害を行える状況。
こりゃあ家族も読者もどいつが犯人なんだと疑心暗鬼になるってもんですぜ。

伏魔殿の『ねじれた家』で捜査を続ける五里霧中のチャールズに、ある探偵がヒントをくれます。
この作品の主人公といってもいいジョセフィンちゃんの登場です!ソフィアの妹で、探偵小説のまねごとをする若干12歳の幼き探偵です。なんというおいしい設定!ぶっさいくて書かれてる気がするけど、そんなん無視だ無視、文章だけなんだから脳内変換しほうだいだZE!
好奇心旺盛なジョセフィンは、家政婦のごとく、色んな物を見たおかげでたくさんの情報を知っています。
ジョセフィンの情報のおかげで捜査も進展。チャールズもあの子は凄いよと上機嫌。
しかしチャールズと違い経験豊富なパパはチャールズに警告を言う。
「ジョセフィンは危険だ!彼女を見張るんだ。」

ジョセフィンに魔の手が!


※ここから続きはネタバレがあります

さて、この作品は某超有名作品と同じ仕掛けのあるミステリーです。ネタバレ防止のため某超有名作品の名前は伏せます。

その仕掛けというのは
「子供が犯人」
である。
意外性のある犯人のパターンでも禁じ手の一つ?かと思われる。(まあミステリーにおいて禁じ手なんて破られるためにあるんだけどね)意外性もさることながら道徳的な問題もあるからだろう。現在において悲しいことに少年犯罪なんてそう珍しいことでもなくなったが、それでも相当な覚悟を持ってなくては扱ってはならない題材であるように思う。
クリスティは、このテーマと某超有名作品にどのように挑戦したのか。

クリスティは『子供が犯人』だけでなくもう一つ禁じ手といってもよい仕掛けを施している。それは『探偵が犯人』であるパターン。主人公のチャールズは卓越した推理力を発揮するような探偵ではなく、今作における明確な探偵役はいない。そうなると、ヒントを与える(このヒント自体ほとんどフェイクなんだけど)探偵ごっこをするジョセフィンが探偵役なのではないかと錯覚してしまうようにできているのだ。
この二重の仕掛けは某超有名作品には無いものである。

もう一つ、クリスティはこの作品で某超有名作品を批判しているのではないかと思う。
某超有名作品の犯人には『子供』である設定以外ほとんど個性のない登場人物なのである。(それ故にとんでもなく意外性があるんだけどね)
さらには探偵が少年犯罪なんてまだこの時代で扱えるものではないと(どの時代かはネタバレになる可能性がいちおうあるので伏せときます)、犯人を問答無用で殺害してしまうのだ。某超有名作品の探偵も、苦しみ悩みぬいた末に選んだ苦汁の選択であり、探偵の苦悩と殺害を行った後の疲れきった姿に読んでる読者も胸が締め付けられるほどである。

対してクリスティはどうだろう。クリスティは『ねじれた家』の犯人ジョセフィンに立派なキャラクターを与え、一人の人間として扱っている。
ジョセフィンは某超有名作品と同じく死によって物語を退場する。しかし、某超有名作品の犯人と違う所は彼女にはいっしょに死んでくれる人がいたこと。
アリスタイドの先妻の姉であり子供たちの面倒を見てきたエディス・デ・ハヴィラントが、真相に気づき、彼女と無理心中を行ったのだ。もちろん無理心中も殺人も駄目なことなんだけど、例え殺人犯といえど人の命を奪うことは自分の命を捨てる覚悟を持ってなくてはいけないとクリスティは言っている気がする。
現在から見れば、クリスティも子供の人権を無視していると言われても仕方が無い。
それでも某超有名作品と比べたらクリスティは、『ねじれた家』においては子供を一人の人間として見ていたと思う。

クリスティはミステリーとしての仕掛けよりも、道徳的な問題で『子供が犯人』というテーマと某超有名作品に挑戦したのではないかと自分は考えてます。
まあただ単に自分もやってみたかっただけかもしれないけどねw (ここまで来てそれかよ)


※自分は決して某超有名作品を批判しているわけではありません。もしかしたらクリスティがそう考えて『ねじれた家』を書いたのではないかと推察しただけです。自分は某超有名作品も超が付くほど大好きですよ。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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