黄色い部屋の謎 ガストン・ルルー

黄色い部屋の謎 (創元推理文庫)黄色い部屋の謎 (創元推理文庫)
(2008/01)
ガストン ルルー

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<あらすじ>
スタンガースン博士が住む城で奇妙な事件が起こる。城の離れにある『黄色い部屋』で彼の令嬢の悲鳴と銃声が聞こえた。駆けつけた一同がドアを壊し部屋の中に入るとそこには血まみれの令嬢の姿だけで犯人の姿は無かった。いったい犯人はどうやってこの密室から消え去る事ができたのか。この謎に若き新聞記者ルールタビーユが挑む。


『オペラ座の怪人』で有名なガストン・ルルーが手がけた推理小説です。密室トリックを扱った古典ミステリーとしても有名で、江戸川乱歩が黄金時代のベスト・テンに選んだ事でも知られてる作品です。
いわば密室トリックを扱った本格ミステリーの元祖にあたるような作品で、歴史的に価値のある作品である事も評価を高めている原因かと思われます。『黄色い部屋の謎』以前の密室トリックを扱った作品は、本格ミステリーとは言い難い、トリックがなんじゃこりゃあとなるような作品ばかりだったようですな。そもそも密室トリックというジャンルが定義付けされていなかったのかな。
『黄色い部屋の謎』が本格ミステリーにおける密室トリックの先駆者じゃあ!どうだまいったか!と大見得を切って言いましたが、実は『黄色い部屋の謎』より先行する形で本格的な密室トリックを世に出したイズレイル・ザングウィル作『ビッグ・ボウの殺人』(こっちはまだ未読)という作品があるのです!
な、なんだってー!!それじゃあ何で『黄色い部屋の謎』が本格ミステリーの密室トリックの元祖みたいになってんですか?!
まあ多分どっちも本格ミステリーの密室トリックの元祖として扱われていたけど、『黄色い部屋の謎』の方が有名になってしまい『ビッグ・ボウの殺人』の影が薄くなったって事かもしれない。発明家とか発見者とかでもよくある、実は誰々の方が先だったんだよ、だけどあいつの方が有名なせいで(ryみたいなのと似てますね。
もしかしたら日本だけが『黄色い部屋の謎』を本格ミステリーにおける密室トリックの先駆者として扱っている可能性もありますが。


あらすじに書いてある密室事件だけでなく、屋敷に次々に不可思議な事件が登場人物たちに襲いかかります。
廊下で犯人を四方から追い詰めたはずが、突然犯人の姿が消えてしまうという事件が発生。その後も、再度犯人を屋敷の庭の壁に追い詰め、犯人に発砲するが、何故か死体は刺殺死体として発見され、しかもその死体は犯人では無かったという事が判明される。
つまり、第一の事件と同じく犯人の姿が消失してしまうという事件が続けざまに発生したのだ。
なんと!不可能犯罪が三度も起きるというミステリー愛読者から嬉しい悲鳴が聴こえてきそうなエキサイティングな内容です。

しかし、読者は良くても、登場人物たちはそりゃあビビりまくります。
こんな摩訶不思議アドベンチャーに挑む探偵は弱冠18歳の新聞記者・ジョゼフ・ルールタビーユ。
なんと18歳の探偵!若い!まさに金田一少年や名探偵コナンといった少年探偵のご先祖です。当時の18歳はもう成年といって言い年かもしれませんが、それでもホームズ、ポアロといった探偵たちから比べたらやっぱ少年ですよ。
この少年探偵が自身の知性を駆使して、事件解決のためとはいえ、大人たちをいいように振り回す様子には、人によっては癇に障るかもしれません。ルールタビーユってこの話では子供特有の可愛げってのがあまり無いんですよね。それでいて才気走っていて、あまりミスもしない天才型の探偵なんだから、イラっとくる人もいるだろうなあ。
が、この超常現象としか思えない事件に対して、一歩もひるまず立ち向かうルールタビーユの姿は頼もしくカッコいい!そういう意味ではまさに少年漫画に出てくる主人公のごとしです。

この作品にはもう一人探偵が出てきます。その名はパリ警視庁の名探偵フレデリック・ラルサン。彼は、探偵ものによく出てくる探偵たちの引き立て役となるヘボ警官ではございません。彼は確固とした捜査で推理し、ルールタビーユでもなかなかその推理を崩す事の出来ない強力なライバルです。
フレデリック・ラルサンは令嬢マチルドの婚約者ダルザック教授が犯人であると指摘し、ダルザック教授を擁護するルールタビーユは対立します。
この二人の探偵の推理勝負がこの作品の魅力の一つになっております。そういえばミステリーとかでよくある名探偵同士の推理勝負ってこの作品が元祖なんですかね?


古風な城が舞台で、次々と不可能犯罪が起きて、その上、名探偵の推理勝負まであるんだから、そりゃあ面白いはずだわ。
読者が推理するのに、全て証拠を提示しているわけではないというアンフェアな所があったり(時代を考慮すれば仕方無いかもしれない)、まさに古典って感じで多少の読み辛さもありますが、名作と評価されるのも納得の作品です。


※ここから続きはネタバレがあります
第一の事件は令嬢が生きていた事がみそです。
実は令嬢が犯人に襲われたのは銃声が起きるより前の事であった。襲撃は失敗し、犯人は逃亡した。
醜聞をはばかって令嬢が事件の事を隠そうとしていたが、『黄色い部屋』で寝てしまい、犯人に襲われる夢を見て、持っていたピストルを撃って悲鳴を上げたため、その時に事件が起きたのだと、城にいる人間が錯覚したのだ。そのため、ドアを壊しても犯人の姿は無かったのである。
密室という状況を覆すこと無く、まさに心理的盲点を突いたトリックなんだが、正直がっかりなオチ。令嬢が全部話せば、それで事件は解決していまうというのもガッカリポイントの一つ。だけど、当時ではかなり斬新なトリックだったんだろうなあ。

第二の事件は第一と比べて、納得できるしオオ!っとなったので正直ホッとしました。
廊下で追い詰められた犯人の姿は、実は変装であり、追い詰められる直前に変装を解き、犯人を追い詰める側の人間に切り替わったのだ。そのため、まるで犯人が消えたように見えたのである。

第三の事件のトリックは、壁に楔を打ち込み、それを踏み台にして窓まで逃げたというもの。
第一、第二に比べて乱暴というか雑なトリックだなあ…。
あれ?壁に楔の後があるなんて書いてあったっけ?

この作品のトリックは、現在ではあの手この手で色んなバリエーションが作られて基本となっているようなトリックだが、当時としては斬新なトリックだったと思われます(楔のトリックについては多分これっきりだと思うけどw)
犯人についても当時としては斬新で衝撃的だったと思われます。なんと警察官であるフレデリック・ラルサンが犯人だったのだ!これも今じゃよくある意外な犯人パターンの一つですよね。よくあるパターンでもやっぱ警察官が犯人ってパターンは毎回驚かされる事が多いなあ。

斬新なトリックに意外な犯人、前にも書いたけどそりゃあ面白いはずだし、名作だと称えられるはずだわ。
同じ密室の元祖『ビッグ・ボウの殺人』の知名度が若干低いのは、『黄色い部屋の謎』のインパクトがでか過ぎるのが理由かもしれないと思ってしまうほどでした。


そうそう、この『黄色い部屋の謎』には、この作品だけじゃ判明されない謎があります。ええ!ミステリーなのに謎を残していいのかよ!?ルールタビーユが時々口に出す『黒衣婦人の香り』という謎の単語、そのミステリアスな単語の秘密は続編『黒衣婦人の香り』で解き明かされる事になります。
続編まで謎を残すとか、当時のミステリーは自由だなあ。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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