チャイナ橙の謎(チャイナ・オレンジの秘密) エラリー・クイーン

チャイナ橙の謎 (創元推理文庫 104-12)チャイナ橙の謎 (創元推理文庫 104-12)
(1960/01/01)
エラリー・クイーン

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<あらすじ>
チャンセラーホテルにあるドナルド・カーク事務所の控室で死体が発見される。ドナルド・カークの関係者一同は、不思議な事に殺された男を誰も知らないと言う。それ以上に不思議な事は、死体の衣服を含め、絨毯や本棚など部屋のあるゆるものが〝あべこべ"になっていたのだ。いったい誰が何のために〝あべこべ"にしたのか?


エラリー・クイーンの国名シリーズ8作目の作品。シリーズものの作品だと、8作目ぐらいまでくると初期の頃と違って新しいパターンに挑戦しようかなと変化球を飛ばそうと考える作者が多いかと思われます。エラリー・クイーンもその例に漏れず。それがこの『チャイナ橙の謎』です。

あらすじにも書かれているとおり、変化球も変化球。服は逆に着せられ、絨毯は裏返し、本棚は逆方向、部屋の全てのものが〝あべこべ"という全く意味がわからんぞと言いたくなるような場所で死体は発見されます。
それでいて、死体の服には何故か槍が通されているというおまけつき。
何故、この意味不明な状況になったのか?それを解き明かそうという趣向は、初期の作品には無いものであり、新鮮さがあります。

こんな変てこな状況にパパさんは、犯人に聞けばそれで解決だとスルーして捜査をしますが、死んだ男を誰も知らないので捜査は毎度のごとく難航します。
この身元不明の死体というのもこの作品のキーワードの一つです。

対してエラリーは〝あべこべ"の謎を解く事こそが死体の正体を知るために重要であり、事件解決の鍵であるのではないかと推測します。
何故なら、この事件には〝あべこべ"の国『チャイナ』そう『中国』が多く関わっているからだ!
殺された男がいた部屋にあった『チャイナオレンジ』、『中国』に昔住んでいた女流作家ジョー・テンプル、ドナルド・カークの友人グレン・マグゴアンが手に入れたあべこべの『中国切手』。
これだけ揃っていて、『中国』が関係ないはずがない!〝あべこべ"は『中国』を指し示しているのではないか!?

…『中国』関係が揃っているのはいいとして、『中国』が〝あべこべ"の国ってのはちょっとどうよ?
クイーンが作中に、『中国』にある〝あべこべ"の例をたくさん書いてくれているんですが、ああ確かにそうだねと思う物もあるんですが、若干胡散臭いところもあります。
『日本庭園の秘密』の時のように眉つばもんの知識もありそうだよなあ…。まあ、そこらへんはそういうものと思って、深く考えない方がよさそうです。
当時のアメリカでは『中国』は〝あべこべ"の国と思われていたという事なのだろうか…。

『あべこべ』『身元不明の遺体』『中国』をキーワードに、エラリーたちは推理と捜査を進め、そこにカーク家の人間模様や秘密が絡んで、複雑な状況やドラマが生まれ、ミステリーとして大いに読者を楽しませてくれます。


※ここから続きはネタバレがあります
部屋のあらゆるものが〝あべこべ"であった理由、それは被害者が牧師である事を隠すための犯人の工作だった。
カトリックの牧師はカラーを後ろ向きにつけている、つまり牧師のカラーは〝あべこべ"。
木の葉を隠すなら森の中、〝あべこべ"を隠すなら〝あべこべ"の中、というわけで部屋のあらゆるものを〝あべこべ"にしたのでした。

う~ん…確かに納得できるものであるけど、カトリックに普段関わる機会の少ない一般の日本人だとこれを推測するのは難しいなあ。まさに、欧米のミステリーだからこその仕掛けですな。

被害者は中国から来た牧師であり、犯人の殺害の動機は牧師が持ってきた中国の切手を手に入れるためだったわけだから、『中国』に関係があったのは事実なんですが、〝あべこべ"が『中国』を指し示すものであるというエラリーの推理はミスリードだったようです。

『あべこべ』『身元不明の遺体』『中国』の三つのキーワードを回収できたわけですが、この『チャイナ橙の謎』という作品にはもう一つ隠されたテーマがあります。
『チャイナ橙の謎』についてググってみたら、すぐわかると思うんですが、実はこれ密室殺人なんですよね。密室ものの代表作としてもこの作品が挙げられるし、クイーンが手がけた密室ものとして紹介されてる事が多いです。
それぐらい密室ものとして、有名な作品なんですが、実は完全な密室じゃありません。俗に言う〝準密室”って呼ばれるやつなんですが、部屋にある二つのドアのうち片方だけかんぬきがかかっていて、片方だけ空いているという状況です。
どの人間にも部屋に入る事が可能である状況なんですが、ある一人の容疑者だけ空いてるドアに行けないという状況…つまり密室ものである事がわかってしまうと自然に犯人が誰かわかってしまうんですよね…。

自分は密室ものと知ってこの作品を読んだわけだから、ミステリーの醍醐味の大部分を占める犯人探しを楽しむ事ができませんでした…。トリックを分別したり、作品がどういう物である事か説明するのもいいけど、こういう事態になる可能性も考慮してほしいよなあ。まあ、これも有名ミステリーの宿命という物かもしれん。

密室のトリックは糸を使ったものですが、死体を利用してかんぬきを閉めるというアイディアはなかなか面白いものでした。普通に糸だけでかんぬき閉めれなかったのかなと思わなくもないですが…。

犯人当てだけは残念でしたが、変わった趣向ありーの、密室トリックありーの、なかなか楽しめる作品でした。
ただ、フレデリック・ダネイ(作者の片方)がベスト6に選ぶほどではなかったかなあ…。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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