怪盗紳士ルパン モーリス・ルブラン

怪盗紳士ルパン (ハヤカワ文庫 HM)怪盗紳士ルパン (ハヤカワ文庫 HM)
(2005/09/09)
モーリス・ルブラン

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<あらすじ>
大西洋を行く客船プロヴァンス号に電信が伝えられた。『貴船の一等室にアルセーヌ・ルパンあり。金髪、右腕負傷、同行者無し、変名はR…』
あの怪盗ルパンが船に潜入、いったい誰が犯人なのか?デビュー作『アルセーヌ・ルパンの逮捕』をはじめとした連作短編集。


この作品、他の出版社からも別の訳者で出ていますが、ハヤカワ版あるいは偕成社版がおすすめかと思われます。ポプラ社版はオリジナル要素がありますし、新潮社版は訳が古臭いですし(ルパンの一人称が『わし』)、創元版(創元版はルパンではなくリュパン)だと抜けてる短編があるといった理由で、完訳で読みやすく全部の短編が収録されているハヤカワ版あるいは偕成社版がおすすめです。だいたい図書館に揃っているという理由で偕成社版が一番手に入りやすいかもしれません。

ルパンといえば?日本人が思い浮かぶものは、多分孫の3世だろうなあ。金田一も今じゃ孫の方が有名かもしれないし。
日本じゃ孫の方ばかり有名になって影の薄くなった爺様。3世が魅力的すぎて、1世の方は魅力が無いから忘れられつつあるんだ…っなんてことありません。爺様の方もお孫さんに負けないぐらい魅力的で、それだけでなく3世には無い魅力を感じる人もいるでしょう。
ルパン3世の方は、たまーにミステリー要素がある作品もあるけど、基本的にはアクション主体の作品。対して元祖の方アルセーヌ・ルパンはまぎれもなくミステリーです。
(余談なんだけど、幼きころ3世のせいでアルセーヌ・ルパンの方もミステリーとは思っていなかったので、『名探偵コナン』の名探偵図鑑で紹介されて驚いた覚えがある)
アルセーヌ・ルパンのシリーズは現在の感覚で読むと、ミステリーとして古臭かったりアンフェアなところはありますが、今のミステリーには無い面白さがあり、あのトリックの元祖なのねって事があったりするミステリーとしてなかなかあなどれないシリーズです。


そんなアルセーヌ・ルパンの第一作が今作『怪盗紳士ルパン』です。

最初のシリーズでありながら、泥棒やったり、財宝の隠し場所を探すため暗号を解いたり、凶悪犯を捕まえるため探偵をやったりとルパンが八面六臂の活躍をして読者を楽しませてくれます。
警察を欺き読者に謎を提供する犯罪者であると同時に、謎を解く探偵でもあるのがルパンの魅力の一つであり、他のミステリーの主人公とは違うところです。こんな贅沢なつうか役割てんてこ盛りなキャラクター、作者であるルブランはよく考えたなあ。そんなルパンの魅力をあますことなく今作は紹介していると思います。
ルパンの活躍だけでなく、なんと一作目でありながらルパンが失敗したり、一作目なのに隠されたルパンの過去が語れたり、ルパンのライバル、ガニマール警部の活躍もあったりと思ったら新ライバルが早くも登場したり、ヒロインと悲しいロマンスがあったりと、もうほんまにてんてこ盛りです、一作目なのに!このルブランの出し惜しみなさを見るとこのシリーズが大成功した理由というのがよくわかります。ジャンプの打ち切り作家も見習うべきですね。
このバラエティー豊かさがこの作品『怪盗紳士ルパン』の魅力の一つです。

そして、このバラエティ豊かな短編集をただの独立した短編の集合体だけではなく、連作短編集という一つの物語としてまとめた構成になっている点も今作の優れたところの一つです。
1話である『ルパン逮捕される』から2話『獄中のアルセーヌ・ルパン』、そして3話『ルパンの脱獄』までは完全に繋がった話になっています。一つの話だけでも、短編として成り立っていますが、1から3話までまとめて中編の小説としても読めるようになっています。
その後、それまでルパンの無双ぶりをこれまでかってほど描いた後(たまに失敗もするけど)、最終話でルパンに対抗できる新ライバル登場という展開が、次巻へ期待が持てる強烈なひきとなっております。まるで、少年漫画みたいな構成だな。ジャンプの打ち切り作家も(ry
それで最終話のタイトルがなんと『遅かりしシャーロック・ホームズ』。えええええ!!!いいのかよ勝手にだして!確かにルパンのライバルとして強烈なインパクトあるけども!
もちろん後で問題になったらしく、次作の『ルパン対ホームズ』ではシャーロック・ホームズではなく、エルロック・ショルメスと名前を変えた別人として登場する事になります。(だけど邦訳だとホームズのまんま)まあそうなるよなあw
そして最終話である『遅かりしシャーロック・ホームズ』に1話『ルパン逮捕される』以来出てこなかったとある人物が登場。それによって今作『怪盗紳士ルパン』が一つの物語として幕を閉じる事になり、ルパンに新しいキャラクター性が与えられる事になります。

あとミステリーとして見た場合、今作は意外と心理トリックが多い点が目につきます。最初に読んだルパンものは『怪盗紳士ルパン』とは別の作品で、割かし隠し部屋とかのアンフェアな物理トリック多かったので、今作を読んだ時は驚かされました。
そういう点も含めて、今作が一番ルパンの行う犯罪に驚かされるともに、スマートでカッコ良く、彼が名犯罪者だと思えますね。


※続きにはネタバレがあります。
『ルパン逮捕される』
なんと一人称の語り手がルパンだった。後の叙述トリックを使ったミステリーと比べるとアンフェアな点はあるが、1907年に発表された作品である事を考えれば、その先進性は凄いとしか言いようがないです。


『女王の首飾り』
なんと少年が犯人であった。意外な犯人パターン『子供が犯人』の元祖かと思われます。『ルパン逮捕される』とともに、ルブランの先進性には感心します。
その真相をさも探偵であるかのように説明する人物こそが、犯人の成長した姿であり、実は彼がルパンであったという結末が、いかにもルパンらしく、しゃれています。


『遅かりしシャーロック・ホームズ』
城の暗号、ホームズとの対決もそれなりに楽しめますが、『アルセーヌ・ルパンの逮捕』で登場したネリーの再登場が一番印象に残ります。
彼女との切ない別れが、ルパンのロマンス、それも悲恋が多い事を象徴しているような気がしてならないです。そして、アルセーヌ・ルパンは悲しきサガを持ったヒーローなのだということも…。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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