月光ゲーム―Yの悲劇’88 有栖川有栖

月光ゲーム―Yの悲劇’88 (創元推理文庫)月光ゲーム―Yの悲劇’88 (創元推理文庫)
(1994/07)
有栖川 有栖

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<あらすじ>有栖川有栖は部員として英都大学推理小説研究会と共に夏合宿のために矢吹山のキャンプ場へやってきた。そこで、彼らは他の大学のグループと出会い、共にキャンプを楽しんでいたが、突然火山が噴火し、学生たちは閉じ込められてしまう。そんな極限状態の中で殺人事件が発生。そして、遺体のそばにはYの文字が残されていた…。


新本格ミステリ作家として有名な有栖川有栖のデビュー作。
そういえば国産ミステリーのレビューは初めてだな。

作者がエラリー・クイーンを目指してるため、ロジック重視の作品です。そして、『Yの悲劇’88』なんて大層な副題があるんだから、作品の内容もエラリー・クイーンの代表作『Yの悲劇』リスペクトな作品なのかといえば、ダイイングメッセージにYという文字が出てくるだけで、全然『Yの悲劇』風な作品じゃないです。キチな一族もマンドリンも出てきません。そもそも館ものじゃないし。
突然の災害によってできたクローズドサークル、警察の捜査が出来ないという状況、ダイイングメッセージ…って火山の噴火と山火事の違いはあれどこれ完全にエラリー・クイーンの『シャム双子の謎』じゃん!
つまり『月光ゲーム』は有栖川有栖流の『シャム双子の謎』かと思われます。
プロでない素人が探偵をするにはクローズドサークルが一番都合が良くかつクイーンにあこがれている作者としては『シャム双子の謎』に挑戦してみたかったんでしょう。

設定はシャム双子に似てますが、ミステリーとしての中身はだいぶ違います。ちゃんとした作者独自のミステリーになってます。
が、個人的にはミステリーとしてのデキはぶっちゃけ本家の『シャム双子の謎』の方が上だと思います。ダイイングメッセージの意味、犯人を突き止めるまでのロジックなど『月光ゲーム』にも優れた点がありますが、犯人の意外性、ダイイングメッセージの使い方などの点で自分は『シャム双子の謎』に軍配を上げます。後、先に『シャム双子』の方がを先に読んだからという理由もあるけど。

じゃあ『月光ゲーム』は『シャム双子の謎』には無い、長所は無いのか…いや、ある。
それはこの作品はミステリーであると同時に青春ものであるという事。

登場人物がみんな学生であり、そこで描かれる人間ドラマは青臭くてまさに青春もの。学生だけでも男女の集団だったらドロドロしたものもできそうなんですが、割と爽やかななのは作者の作風なんだろうな。主人公であるアリスのほのかな恋も描かれており、恋をした相手がもしかして犯人じゃないのかなんて疑ったりして、恋心と事件に心が揺れる!?なんてまさに青春ミステリーって感じです(書いててなんか恥ずかしいぞ)。

話が終盤に差し掛かると、シャム双子と同じく、学生たちに殺人事件だけでなく災害によって命の危険が迫ります。こういったパニックものとしての面白さがあるのもシャム双子と一緒です。
この危険な状況から逃れるため、学生たちは山からの脱出を図ります。
こういった状況の中での登場人物たちの奮闘がしっかり描かれていると、たとえこの中に犯人がいるのだとしても、みんな生き残って欲しいと感情移入してしまうなあ。
そういった点は、登場人物を全員普通の学生たちにして感情移入しやすくしたためシャム双子より強いです。火山の噴火から学生たちが協力し合って生き延びようとする様子も、青春ものっぽいです。

そして、事件が全て終わった後の、悲しい結末…、切なく爽やかな幕切れ…。『月光ゲーム』という作品が、より青春ものであった事を感じる読後感でした。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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