黒衣夫人の香り ガストン・ルルー

黒衣婦人の香り (創元推理文庫 108-2)黒衣婦人の香り (創元推理文庫 108-2)
(1976/03/19)
ルルー、ガストン・ルルー 他

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<あらすじ>
『黄色い部屋の謎』の事件から2年後、青年記者ルールタビーユは再び悪夢のような事件に巻きこまれる。令嬢マチルドにまたしても魔の手が。『黄色い部屋の謎』の事件の犯人による犯行なのか?そして、ルールタビーユは自身の過去『黒衣婦人の香り』と直面する事となる。


名作『黄色い部屋の謎』の続編です。前作で残った謎“黒衣婦人の香り”が明かされる事となります。また、今作は完全な続編であるため、前作を読んでなければ意味不明な内容であり、前作のネタバレがされてるのでご注意下さい。

名作とされる『黄色い部屋の謎』と比べて、続編『黒衣婦人の香り』の評価はあんまり芳しくありません。
それは、『黄色い部屋の謎』がそれ一個で独立した推理小説として読む事ができるのに対して、『黒衣婦人の香り』は『黄色い部屋の謎』を読んだ事前提の完全なそれ一個じゃ読むことのできない続編だからというのもあるでしょう。推理小説で、前作読んでないとわけがわからないとなる作品なんて当時じゃあ滅多にないでしょうからね。

それともう一つ、『黄色い部屋の謎』がド直球の本格ミステリーであるのに対して、『黒衣婦人の香り』はサスペンス要素だったりルールタビーユの過去にページを割かれていたりと、本格ミステリーを信奉する人からしたら不純物として切り捨てられかねない要素があるのが原因の一つかもしれません。
ちゃんと、外界から隔離された古城で行われる本格ミステリーの王道もあるんですけど、そこに行くまでが長い。そこに至るまでに先に不純物とされかねない要素でずっと話が続いていくし、古城に入ってからもその要素が完全に無くなる事はありません。
とにかくこれでもかっていうぐらい王道の本格ミステリーをやってた『黄色い部屋の謎』が大好きだった人は、そりゃあ『黒衣婦人の香り』なんて大嫌い!になるんだろうな。『黒衣婦人の香り』の評価の低さは『黄色い部屋の謎』の評価の高さの裏返しでもあるようにも思います。
それ以外にも低評価の原因はあるんですが、ネタバレになるんで、また後で。

こんなに世間では評価の低い『黒衣婦人の香り』だけど、自分は大好きです。ぶっちゃけ、『黄色い部屋の謎』より好きかも。まあ、自分だけがこの人の良さを知ってるのよ、世間で評価される『黄色い部屋の謎』より『黒衣婦人の香り』を評価する俺カッケーみたいなのがないわけではないけど。
本格ミステリーとして不純物とされかねないサスペンス要素だったりルールタビーユの過去が面白いんですよ!令嬢マチルドを犯人の魔の手から守ろうとするサスペンスはスリリングで面白いし、ルールタビーユの過去も前作ですんごく気になってた事もあってか興味深く読めたし、過去に苦悩するルールタビーユとそれを必死で支えようとする相棒サンクレールとの友情も熱いです!腐のつくお姉さんも喜ぶ事受け合いなぐらい、熱いですよー!
ところで話は変わりますが、相棒のサンクレールが恋に落ちます。ワトソンといいヘイスティングズといい探偵の相棒は長編2作目で恋に落ちる法則でもあるんだろうか。
そういった感じでミステリー以外の要素が充実していて、物語としては『黄色い部屋の謎』より『黒衣婦人の香り』の方がだんぜん面白いです。こういったところが、自分が『黄色い部屋の謎』より『黒衣婦人の香り』の方が好きな理由かもしれません。

ミステリー以外の要素はふんだんにあり、だけどミステリーとしてはどうなのか?
『黄色い部屋の謎』には負けるかもしれませんが、『黒衣婦人の香り』もミステリーとして十分な面白さを持っています。
『黄色い部屋の謎』と同じく、今作も密室事件が発生。なんと、今回はどうやっても侵入する事のできない密室に人が増えます。前回の密室から消えた犯人と真逆ですな。
侵入不可能な部屋に犯人が現れるというだけなんですが、それを「余分な肉体」って表現するのが良いなあ。こういうケレン味の良さがこのシリーズの良さだと思います。

物語としての充実は評価が分かれるでしょうが、『黒衣婦人の香り』は魅力的な謎があり、それだけでもミステリーとして優れた作品であるかと思う人もいるでしょう。
しかしミステリーとは優れた謎を読者に提供するだけでなく、優れた解答を読者に提供できなくては優れたミステリーという評価を得られない。『黒衣婦人の香り』は万人が納得でき、意外性のある優れた解答を用意する事ができたのか。ここで、先に書いたネタバレに接触する低評価の原因があるわけでして…。


※ここから続きはネタバレがあります。
ルールタビーユの過去、それは両親との過去。なんとマチルド嬢が自身の母であり、犯人が自身の父であったのだ。母を守るために父と戦うってなんてドラマティックなんでしょ!
こういう無駄にドラマティックなのもこの作品が好きなところです。

そして、お次は密室事件の真相。
密室事件はダルザック氏とマチルドの夫妻の部屋で起こる。夫妻の部屋に犯人が襲撃するが、逆に犯人は返り討ちに合い、夫妻はジャガイモ袋に犯人の体を入れ、それを始末してしまったのだ。

ルールタビーユは、その事件を犯罪として告発すべきか苦悩する。もう一つルールタビーユを悩ましたのは、犯人がどうやって侵入不可能のその部屋に入ったのかという事だった。

その真相は、なんとダルザックが二人いたのだ。正確にはダルザックに変装していた犯人とダルザック本人の二人が城にいたのだ。そのため、何も知らぬ人間には一人の人間が堂々と部屋に入ったかのように見えていたが、事実は二人の人間が部屋に入ったのだ。
そして、最初からマチルドと一緒にいて犯人から妻を守っていたように見えたダルザックが犯人の変装であった事も判明する。返り討ちに合い、ジャガイモ袋に入れられた方が本物のダルザックだったのだ。

このトリックはミステリーとして考えて、一つの問題が出てきます。それは、妻にさえばれない本人そっくりの変装が無くては成立しないという事。本格ミステリーとして考えると、こんなことはありえない事でありリアリティが欠如しているとされても仕方ありません。
これもこの作品の評価が低い原因の一つでしょう。

確かにこの変装については批判が出る事は仕方ないでしょう。ですが、こういう疵があっても、このトリックを成立するための伏線、トリックの真相は個人的にはなかなかのものだと思います。
個人的に、このトリックを含めて、自分は『黒衣婦人の香り』が好きです。


見事、真相を解いたルールタビーユはダルザック氏を救出し(正確には真相を解く前に助けてるのだが)犯人を撃退。ルールタビーユは母マチルドを悪の手から守る事ができたのだ。まさにハッピーエンドです。
正直、ハッピーエンドで終われると思ってなかったんだよなあ。勝手に悲劇的なラストが待ってるんじゃないかって思ってた。

実は、この作品でも次回作についてほのめかされている個所があります。なんでもロシアの皇帝の依頼だとか。ここらへんが今のミステリーと違うとこだなあ。新聞で連載していた小説であるためだろうか。
『黄色い部屋の謎』『黒衣婦人の香り』の二作と違い、次回作には繋がりはないようです。
ぜひとも次回作も読みたいと思っていたのに、なんと次回作は翻訳されていない!?
探偵ルルータビーユとその物語を気にいってる自分としてはもっと、作品が読みたいと思っていたのに、そんな殺生な!誰か翻訳して下さい、マジで。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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